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ベンダーに聞く質問リスト

検討のフェーズ別に、そのまま読み上げられる質問文として。全21問。

このページは印刷して会議に持ち込めるように組んである。ブラウザの印刷機能でそのまま出力できる。

一言でいうと

ベンダーに聞く質問を、そのまま読み上げられる文として並べた。検討のフェーズごとに分けている。

質問ごとに、なぜそれを聞くのか、どんな答えなら安心してよいか、どんな答えが危険信号かを付けた。印刷して会議に持ち込むことを想定している。

何を解決するために作ったか

説明会や打ち合わせの場で、技術的な質問を思いつくのは難しい。相手は自社の製品について毎日話しているが、こちらは初めて聞く。その場で適切な問いを立てるのは、知識の差がある限り無理である。

だからこの一覧は、その場で考えなくても済むように作った。読み上げれば質問になる。答えを聞き分けるための目安も付けてある。技術を理解していなくても、答えの形から進み具合は判断できる。

質問の順序には意味がある。検討初期に契約条項の話をしても、相手は答えを用意していない。逆に、契約直前になってODDの定義書を初めて求めると、間に合わない。各フェーズで聞くべきことを、そのフェーズで聞く。

使うときの前提

全部を一度に聞く必要はない。フェーズ1の5問だけでも、相手の準備の程度は分かる。時間が15分しかない場合は、フェーズ1の最初の3問を勧める。

また、答えられないことは相手の落ち度とは限らない。まだ決まっていない、あるいは業界内で確立していない論点がある。その場合に必要なのは、答えを引き出すことではなく「決まっていない」と記録に残すことである。

フェーズ1|検討初期(何を買うのかを決める前)

この段階の目的は、相手の製品を評価することではない。自分たちが何を必要としているのかを、相手の言葉ではなく自分の言葉で言えるようにすることである。

  1. 「この車両が走れる条件の範囲を書いた文書はありますか。見せていただけますか。」

    なぜこれを聞くのか
    ODD(運行設計領域)の定義書が存在するかどうかで、その後のすべての確認の精度が変わる。文書がなければ、範囲について合意する対象がない。
    こう答えられたら安心してよい
    文書が存在し、道路の種類・速度・天候・時間帯・路面・周囲の交通が項目として並んでいる。項目ごとに数値または条件が書かれている。
    これは危険信号
    「現場を見てから決めます」だけで文書が出てこない。あるいは営業資料の1ページに「市街地・時速20km以下」とだけ書かれている。
  2. 「ODDの外に出たとき、車は何をしますか。どこに停止しますか。」

    なぜこれを聞くのか
    ODDの外に出ることは異常ではなく、必ず起きる。そのときの挙動が運行計画と住民説明の前提になる。
    こう答えられたら安心してよい
    検知の方法、停止の場所(車線内か路肩か)、停止までの距離、後続車への表示、その後の復帰手順が順に説明される。
    これは危険信号
    「安全に停止します」で終わる。停止した車をどう動かすかの説明がない。
  3. 「車内が無人のとき、誰がどこから見ていますか。監視者1人あたり何台ですか。」

    なぜこれを聞くのか
    「無人運行」という語は、車内が無人であることしか意味しない。運行費用の大半は監視体制で決まる。
    こう答えられたら安心してよい
    監視センターの場所、監視者の人数と交代、1人あたりの台数、監視者にできる操作の範囲が具体的な数で示される。
    これは危険信号
    1人あたりの台数を答えられない。あるいは「将来的には1人で10台」という将来値だけが示される。
  4. 「この技術は日本国内で、有料の旅客サービスとして現在も運行していますか。場所と開始時期を教えてください。」

    なぜこれを聞くのか
    実証と商用の違いは、続いているかどうかに最も強く表れる。現在も運行しているかを、開始時期とあわせて確認する。
    こう答えられたら安心してよい
    場所・開始年月・料金・運行主体が示される。運行を止めた事例がある場合、その理由も自発的に説明される。
    これは危険信号
    「複数の自治体で導入されています」で終わり、現在も運行しているかが確認できない。
  5. 「この技術の弱点はどこですか。どういう条件で走れませんか。」

    なぜこれを聞くのか
    弱点を説明できるかどうかは、技術理解の深さと誠実さの両方を測る。すべての方式には交換条件がある。
    こう答えられたら安心してよい
    具体的な条件(逆光、降雪、工事、路上駐車の多い道)が挙げられ、それが方式上の必然として説明される。
    これは危険信号
    「特にありません」「改善済みです」。弱点のない自動運転技術は2026年7月時点で存在しない。

フェーズ2|仕様書を作る(要求を文書にする)

この段階で決めた言葉が、契約後に争点になる。相手の資料の表現をそのまま仕様書に写さないことが要点である。

  1. 「ODDの変更は、誰がどのように承認しますか。私たちの承認は必要ですか。」

    なぜこれを聞くのか
    ODDは運行開始後に変わる。誰が変えられるのかを決めていないと、気づかないうちに運行条件が変わる。
    こう答えられたら安心してよい
    変更の申請・審査・承認の手順が文書化されており、発注者側の承認が手順に含まれている。
    これは危険信号
    「弊社で判断します」。あるいは変更手順そのものが存在しない。
  2. 「安全論証(Safety case)は作成されていますか。目次を見せていただけますか。」

    なぜこれを聞くのか
    安全論証は「安全である」という主張を、根拠と証拠の連なりとして示す文書である。国連の協定規則第185号でも要求項目に含まれている。
    こう答えられたら安心してよい
    目次が示され、主張・根拠・証拠の階層になっている。証拠として具体的な試験結果や解析結果が参照されている。
    これは危険信号
    文書名だけが示され、目次が出てこない。あるいは中身が規格名の列挙で、証拠に到達していない。
  3. 「第三者による評価を受けていますか。評価の範囲はどこまでですか。」

    なぜこれを聞くのか
    自己評価と第三者評価は別のものである。住民説明の場で問われたとき、この区別が答えの重みを決める。
    こう答えられたら安心してよい
    評価機関の名前、評価の対象範囲、評価報告書の有無、開示可否が示される。範囲の外側についても明示される。
    これは危険信号
    「国際規格に準拠しています」だけで、誰が確認したのかが示されない。
  4. 「適用した規格の番号と版を教えてください。機能安全とSOTIFの両方に対応していますか。」

    なぜこれを聞くのか
    ISO 26262(機能安全)は壊れたときの安全、ISO 21448(SOTIF)は壊れていないのに危ない場合を扱う。別の規格であり、両方が必要である。
    こう答えられたら安心してよい
    番号と版(例:ISO 26262:2018、ISO 21448:2022)が示され、それぞれの適用範囲が区別して説明される。
    これは危険信号
    「ISOに準拠」という表現だけ。あるいは機能安全のみで、認識性能の限界に由来する危険が誰にも管理されていない。
  5. 「通信が切れたときのふるまいを教えてください。何秒で判定し、何をしますか。」

    なぜこれを聞くのか
    遠隔監視を前提とする運行では、通信断は最も起こりやすい異常である。判定時間と挙動が運行計画に直結する。
    こう答えられたら安心してよい
    判定までの時間、そのときの挙動、復帰の条件が秒単位で示される。通信事業者と回線の冗長性も説明される。
    これは危険信号
    「切れません」「冗長化しています」で終わる。判定時間が示されない。
  6. 「緊急停止したあと、誰が現場に何分で到着しますか。」

    なぜこれを聞くのか
    停止した車は道路上の障害物になる。到着時間は運行計画と、警察・消防との事前調整の前提である。
    こう答えられたら安心してよい
    待機場所、人員、到着までの目標時間が示される。夜間・休日の体制も分けて示される。
    これは危険信号
    到着時間の目標が示されない。あるいは「必要に応じて派遣します」。
  7. 「消防・警察が現場に来たとき、彼らはこの車をどう扱えばよいですか。手順書はありますか。」

    なぜこれを聞くのか
    初動対応者向けの手順は、事故時に最初に必要になる文書である。高電圧系の切り離し、扉の開放、牽引の可否が含まれる。
    こう答えられたら安心してよい
    初動対応者向けの手順書が存在し、地元の消防・警察に事前に渡す想定になっている。
    これは危険信号
    手順書が存在しない。あるいは英語のみで、現場で使えない。

フェーズ3|契約する前(責任と継続性を確かめる)

この段階の確認事項は技術ではない。相手がいなくなったあとに何が残るかである。実証が終わったあとに問題になるのは、ほぼこの部分である。

  1. 「走行データとイベント記録は誰のものですか。開示されますか。DSSADに相当する記録はありますか。」

    なぜこれを聞くのか
    事故が起きたあとに必要になるのはデータである。所有者と開示条件を契約前に決めていないと、必要なときに出てこない。
    こう答えられたら安心してよい
    所有権の帰属、保存期間、開示の条件と形式、第三者調査への提出可否が契約条項として示される。
    これは危険信号
    「開示します」という口頭の約束だけ。あるいは開示対象が月次の集計レポートに限られている。
  2. 「ソフトウェア更新は誰の責任で、いつまで提供されますか。」

    なぜこれを聞くのか
    更新が止まった車は、セキュリティ上も安全上も運行を続けにくい。提供期間は車両の使用可能期間を決める。
    こう答えられたら安心してよい
    提供期間が年数で示され、期間終了後の扱い(延長条件、費用、運行継続の可否)も示される。
    これは危険信号
    「継続的に提供します」という表現のみ。期限が数字で示されない。
  3. 「車両の保証期間と保守契約の期間は何年ですか。期間が終わったあと、運行を続けられますか。」

    なぜこれを聞くのか
    この質問は日本国内の実例から必要になった。国内で最初にレベル4の車両内無人の有料サービスを開始したのは福井県永平寺町である。同町では車両の保証・保守期間が満了し、2026年4月1日以降の運行が当面運休となっている。
    こう答えられたら安心してよい
    保証・保守の期間と、期間終了後の選択肢(延長、更新、車両入れ替え)とその費用が、年数と金額で示される。
    これは危険信号
    保証期間の話が出ない。あるいは「その時期になったらご相談」で終わる。運行の終わりが設計に入っていない。
  4. 「部品の供給保証期間は何年ですか。主要部品の調達先はどこですか。」

    なぜこれを聞くのか
    自動運転車両は台数が少なく、部品が汎用品でない場合が多い。1点の部品が入手できないだけで運行が止まる。
    こう答えられたら安心してよい
    供給保証の年数、主要部品(センサ、計算機、駆動系、バッテリ)ごとの調達先と代替可否が示される。
    これは危険信号
    部品供給の保証年数が示されない。あるいは全部品が単一の海外供給元に依存している。
  5. 「事業から撤退する場合、車両と保守はどうなりますか。」

    なぜこれを聞くのか
    答えにくい質問だが、聞かなければならない。撤退は実際に起きている。
    こう答えられたら安心してよい
    撤退時の引き継ぎ、車両の扱い、技術情報の開示、代替事業者への移管条件が契約条項として用意されている。
    これは危険信号
    質問に不快感を示す。あるいは「そのような予定はありません」で終わる。
  6. 「事故が起きた場合、責任の分担はどうなりますか。保険の被保険者は誰ですか。」

    なぜこれを聞くのか
    運行主体である自治体・事業者が最終的な責任を負う構造は、保険では変わらない。分担を文書で確認する。
    こう答えられたら安心してよい
    責任分担が場合分けして示される(装置の欠陥、運用の逸脱、第三者の過失)。保険の契約者・被保険者・免責・上限が示される。
    これは危険信号
    「保険に加入しています」だけ。免責と上限が示されない。

フェーズ4|運行を始めたあと(前提が変わったことに気づくために)

運行開始後にすることは、監視ではなく前提の確認である。契約時の前提が今も成立しているかを、定期的に確かめる。

  1. 「前回の報告以降、ソフトウェアは何回更新されましたか。ODDは変わりましたか。」

    なぜこれを聞くのか
    更新によって挙動が変わる。変わったことに気づかないまま運行計画を使い続けるのが最も危ない。
    こう答えられたら安心してよい
    更新の履歴が日付つきで示され、ODDへの影響が「変更なし」または「変更あり(内容)」として明記される。
    これは危険信号
    更新の履歴が管理されていない。あるいは「軽微な改善のみ」で内容が示されない。
  2. 「この期間の介入は何回ありましたか。何を1回と数えていますか。」

    なぜこれを聞くのか
    介入の定義は制度によって違う。社内集計の場合、定義そのものを毎回確認する必要がある。
    こう答えられたら安心してよい
    定義が文書で示され、期間・回数・状況の分類が同じ定義で継続して報告される。
    これは危険信号
    定義が変わったのに数字だけが並べられている。数字が改善したのは定義が変わったからかもしれない。
  3. 「この期間の稼働率の分母は何ですか。運休した日と理由を教えてください。」

    なぜこれを聞くのか
    稼働率は分母で作れる。運休の理由の一覧は、稼働率より実態を表す。
    こう答えられたら安心してよい
    分母の定義が明示され、運休日と理由(天候、整備、部品待ち、人員)が一覧で示される。
    これは危険信号
    稼働率のパーセンテージだけが示される。運休の理由が集計されていない。
  4. 「遠隔監視の1人あたり台数は、契約時から変わっていませんか。」

    なぜこれを聞くのか
    運行費用を下げる圧力は、まずここにかかる。契約時の前提が静かに変わることがある。
    こう答えられたら安心してよい
    契約時の数と現在の数が示され、変更があった場合は変更の承認記録も示される。
    これは危険信号
    現在の数を答えられない。あるいは契約時より増えているが、その承認記録がない。
  5. 「部品の在庫と調達のリードタイムは、いま何日ですか。」

    なぜこれを聞くのか
    部品の遅延は、運休の理由として最も多く現れる。運休してから確認しても間に合わない。
    こう答えられたら安心してよい
    主要部品ごとの在庫数とリードタイムが日数で示され、変化があれば事前に共有される。
    これは危険信号
    在庫を把握していない。リードタイムを答えられない。

答えを記録するときの様式

聞いた答えは、その場で記録する。記録がなければ、契約時の前提が何だったのかを後から確認できない。次の3列だけでよい。

表:質問の記録様式。印刷して手書きで埋められるように、列は3つに絞っている。
質問答えられた内容(日付・回答者名)文書で確認できたか
(例)ODDの定義書はありますか2026年◯月◯日、◯◯氏。「ある」と回答。後日送付との説明。未確認(送付待ち)

3列目が重要である。口頭で答えられたことと、文書で確認できたことは別に扱う。契約後に争点になるのは、ほぼ例外なく口頭の約束の部分である。

出典

一次情報を優先している。「区分」は、その資料が発行機関自身の公表物(一次)か、第三者による索引・複製(ミラー)か、解説(二次)かを示す。リンク切れに備え、発行者・文書名・日付を本文でも残している。

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  2. 経済産業省レベル4自動運転移動サービスの実現(道路運送車両法に基づく国内初のレベル4自動運行装置の認可=2023年3月30日、国内初の特定自動運行許可=2023年5月11日 福井県公安委員会)2023年5月12日/区分:一次/参照日 2026年7月30日https://www.meti.go.jp/press/2023/05/20230512002/20230512002.html
  3. 福井県永平寺町自動運転車の運行について(レベル4・車両内無人。大人100円/中学生以下50円。運行主体はまちづくり株式会社ZENコネクト。車両の保証・保守期間が令和8年3月末で満了し、4月1日以降は当面運休)参照日 2026年7月30日/区分:一次/参照日 2026年7月30日https://www.town.eiheiji.lg.jp/
  4. 国土交通省地域公共交通確保維持改善事業費補助金(自動運転社会実装推進事業)事業概要(重点支援 4/5・上限4億円/一般支援 4/5・上限2億円/省人化支援 2/5・上限0.2億円)公募開始 2026年3月27日/区分:一次/参照日 2026年7月30日https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001976722.pdf
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  14. UL Standards & EngagementANSI/UL 4600 Standard for Evaluation of Autonomous Products, Edition 32023年3月17日/区分:一次/参照日 2026年7月30日https://www.shopulstandards.com/ProductDetail.aspx?productId=UL4600_3_S_20230317
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最終更新日:2026年7月30日。このページの記述は同日時点で確認したものである。

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