一言でいうと
G0からG4を、設計思想・前提としているもの・限界・向いている用途の4点で並べる。
新しいほど優れているという表ではない。それぞれが何を得るために何を諦めたのかを示す表である。
この表の読み方
縦の並びは時間の順である。優劣の順ではない。実際、次のことが同時に成り立っている。
- G0の車は、いまも日本の公道と構内で人を運んでいる。
- G3の公道での商用運行実績は、2026年7月時点で限定的である。
- 閉ループの評価では、20年以上前に確立されたルールベースの手法が、当時の最先端の学習手法を上回ったという査読報告がある。
また、現実の製品は複数世代の要素を混ぜている。「この会社はG3である」という分類はできない。
4点での比較
| 世代 | 設計思想 | 前提としているもの | 限界 | 向いている用途 |
|---|---|---|---|---|
| G0 経路教示 |
「どこを走るか」を設計時に解いてしまう。逸脱しないことが安全の根拠 | 路面に敷いた誘導インフラが維持されること。経路が変わらないこと | 敷いた線の外を走れない。経路上の障害物は依然として停止を招く | 専用道、構内、空港制限区域。積雪地帯やトンネルを含む経路 |
| G1 モジュール型+HD地図 |
段に分けて各段を検証する。高精度地図で周囲を先に与える | 地図が現実と一致していること。段の境界に必要な情報が含まれること | 地図の整備範囲を出られない。境界で捨てた情報は復元できない | 整備済みの路線。既存の安全論証の枠組みに乗せたい場合 |
| G2 学習ベースのモジュール型 |
分割は保ったまま、各段の中身を学習に置き換える。俯瞰表現と占有表現 | 学習データが運用地域を代表していること。カメラの取り付けが安定していること | 計算量が解像度の3乗で増える。無視してよい占有を見分けにくい | 都市部のロボタクシー。2026年7月時点で商用運行の中心 |
| G3 End-to-End/マップレス |
段の分割をやめ、1つの学習系で扱う。地図に依存しない | 学習データが十分に多様であること。評価方法が閉ループを反映すること | 故障を切り分けられない。既存の分解型の論証に乗りにくい | 地図整備が現実的でない広い範囲を対象にする場合 |
| G4 世界モデル主導 |
学習と検証の主戦場を計算機の中に移す | 生成したシナリオが現実を代表していること(示す方法が未確立) | 学習データにない種類のシナリオは生成できない。検証が循環しうる | 他の世代を補う検証の道具として。単独での論証は提示されていない |
レイヤーごとに見るとどうなるか
世代の分類は、レイヤーによって意味が変わる。同じ製品でも、認識はG2、計画はG3ということが起こる。
| レイヤー | G0 | G1 | G2 | G3・G4 |
|---|---|---|---|---|
| L02 測位・地図 | 誘導インフラを辿る | 高精度地図と照合 | 地図への依存を減らす | 高精度地図に依存しない |
| L03 認識・予測 | 障害物の有無を判定 | 検出・追跡・予測を段に分ける | 俯瞰表現と占有表現 | 認識と計画の境界が消える |
| L04 判断・計画 | 経路追従と停止則 | ルールベースと最適化 | 計画にも学習を入れる | 1つの学習系。言語を挟む設計もある |
| L11 検証・評価 | 経路単位の受入試験 | 段ごとの単体試験 | シナリオベースとシミュレーション | 生成シナリオによる検証(妥当性の示し方は未確立) |
ベンダーに「御社はどの世代ですか」と聞いても意味がない
聞くべきなのはレイヤーごとの実装である。次の4つが、世代の分類より実務的に役に立つ。
- 「自己位置は何で決めていますか。誘導インフラですか、地図との照合ですか、その場のセンサだけですか」
- 「認識はどういう表現を使っていますか。物体のリストですか、占有の格子ですか」
- 「計画は人が書いたルールですか、学習したモデルですか。両方ならどこで切り替わりますか」
- 「検証はシミュレーションと実路のどちらが主ですか。その比率は何%ですか」
どの世代にも共通していること
比較表は違いを並べたものだが、共通していることもある。
- すべての方式に苦手な条件がある。弱点のない自動運転技術は2026年7月時点で存在しない。
- すべての方式で、経路上の障害物は停止か手動介入を招きうる。公的資料の集計では、路上駐車に遭遇した183回のうち169回が回避困難だった。
- すべての方式で、安全性の統計的な立証は確立していない。走行距離だけでは示せない。
- すべての方式で、保証・保守の期間が運行の継続を左右する。国内で最初のレベル4有料サービスは、この理由で運休している。
技術の選定より前に確認すべきことが、この4つには含まれている。
出典
一次情報を優先している。「区分」は、その資料が発行機関自身の公表物(一次)か、第三者による索引・複製(ミラー)か、解説(二次)かを示す。リンク切れに備え、発行者・文書名・日付を本文でも残している。
- Dauner, D. ほか/CoRL 2023(査読会議)Parting with Misconceptions about Learning-based Vehicle Motion Planning(開ループ評価と閉ループ評価が負の相関を示す。20年以上前に確立されたルールベースのベースラインが閉ループで当時の全ての最先端学習手法を上回った)https://proceedings.mlr.press/v229/dauner23a.html
- 国土交通省道路局道路局における自動運転の取組について(実証の手動介入実数:路上駐車183回中169回が回避困難、積雪55回中41回が幅員減少により停止)https://www.chisou.go.jp/tiiki/toshisaisei/mini_symposium/20201223/02_01kokkousyou_kouennsiryou.pdf
- RAND Corporation(Kalra, N. & Paddock, S. M.)/査読版は Transportation Research Part A 94:182–193Driving to Safety: How Many Miles of Driving Would It Take to Demonstrate Autonomous Vehicle Reliability?(RR-1478-RC。人間の死亡事故率と同等を故障ゼロ・95%信頼度で示すには2億7,500万マイル、20%改善の実証には110億マイル)https://www.rand.org/content/dam/rand/pubs/research_reports/RR1400/RR1478/RAND_RR1478.pdf
- 福井県永平寺町自動運転車の運行について(レベル4・車両内無人。大人100円/中学生以下50円。運行主体はまちづくり株式会社ZENコネクト。車両の保証・保守期間が令和8年3月末で満了し、4月1日以降は当面運休)https://www.town.eiheiji.lg.jp/
- 愛知製鋼株式会社GMPS(Global Magnetic Positioning System)。磁気マーカとMIセンサによる自車位置検知。位置検出精度±5mm、時速200kmまで追従、設置間隔2m〜10mの実績https://www.aichi-steel.co.jp/smart/mi/gmps/
- Zhang, P. ほか/Sensors 21(7):2477(査読誌)Real-Time HD Map Change Detection for Crowdsourcing Update Based on Mid-to-High-End Sensors(専門計測車両による更新は高価で時間がかかると指摘。停止線の検知成績が悪いことを明記)https://www.mdpi.com/1424-8220/21/7/2477
- Philion, J. & Fidler, S./ECCV 2020(査読会議)Lift, Splat, Shoot: Encoding Images from Arbitrary Camera Rigs by Implicitly Unprojecting to 3D(深度を離散確率分布として持ち、BEVへ写像する)https://link.springer.com/chapter/10.1007/978-3-030-58568-6_12
- Tian, X. ほか/NeurIPS 2023 Datasets & Benchmarks(査読会議)Occ3D: A Large-Scale 3D Occupancy Prediction Benchmark for Autonomous Driving(遮蔽で観測できない格子を評価から除くvisibility maskを導入)https://proceedings.neurips.cc/paper_files/paper/2023/file/cabfaeecaae7d6540ee797a66f0130b0-Paper-Datasets_and_Benchmarks.pdf
- Hu, Y. ほか/CVPR 2023 Best Paper(査読会議)Planning-oriented Autonomous Driving(UniAD)。全構成要素を最終目的である計画に向けて最適化する。検出・追跡・地図・予測・占有予測を一つのネットワーク内に明示的に残すhttps://openaccess.thecvf.com/content/CVPR2023/papers/Hu_Planning-Oriented_Autonomous_Driving_CVPR_2023_paper.pdf
- Wayve(企業公式)GAIA-3: Scaling World Models to Power Safety and Evaluation(150億パラメータの潜在拡散ベース世界モデル。方策の相対的な性能を予測できることが示唆されると記載)https://wayve.ai/thinking/gaia-3/
- UNECE(国連欧州経済委員会)New Assessment/Test Method for Automated Driving (NATM) Master Document, WP.29-187-08e(ECE/TRANS/WP.29/2022/58)。仮想試験ツールチェーンの精度を実世界との比較で評価すべきと規定し、妥当性確認に用いたシナリオを超える外挿の根拠づけを要求https://unece.org/sites/default/files/2022-05/WP.29-187-08e.pdf
- Chen, L. ほか/IEEE TPAMI(査読誌)End-to-end Autonomous Driving: Challenges and Frontiers(未解決課題としてマルチモダリティ・解釈性・causal confusion・堅牢性・世界モデルを列挙)https://arxiv.org/abs/2306.16927
最終更新日:2026年7月30日。このページの記述は同日時点で確認したものである。
