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自動運転とは何か

「レベル」という言葉の正確な意味と、それが性能の順位ではないこと。

一言でいうと

人が運転せずに車が走る、という一言では何も決まらない。どこを、どんな条件で、誰が見守りながら走るのかで、必要な技術も責任の所在も変わる。

「レベル」という言葉が広く使われている。だがこれは性能の順位ではない。誰が何をするかの役割分担を書き分けた分類である。

何を解決するために生まれた言葉か

自動運転という言葉は、範囲が広すぎて使いにくい。高速道路で車線を保つ機能も、無人で客を乗せて市街地を走る車も、どちらも「自動運転」と呼ばれてしまう。

この混乱を整理するために作られたのが、SAE International の J3016 という文書である。現行版は2021年4月30日の改訂版で、初版は2014年1月に出ている。ここで運転自動化のレベル0から5までが定義された。

レベルの分類

分類の軸は「誰が何をするか」である。車を動かす一連の作業を動的運転タスクと呼び、これを人と機械のどちらが担うかで分ける。

表:SAE J3016 による運転自動化レベル。列は「誰が担うか」であって、性能の高さではない。
レベル運転操作周囲の監視対応できないときの引き受け手走れる範囲
0制限なし
1人+機械(縦か横の一方)限定される
2機械(縦と横の両方)限定される
3機械機械(要請に応じる)限定される
4機械機械機械限定される
5機械機械機械限定されない

境目は2か所にある。ひとつはレベル2と3の間で、周囲を監視する責任が人から機械に移る。もうひとつはレベル3と4の間で、対応できなくなったときに人が引き受けるかどうかが変わる

レベル4と5の違いは、走れる範囲が限定されるかどうかだけである。レベル4は「限定された範囲では機械が最後まで責任を持つ」ことを意味する。範囲が広いことは意味しない。

レベルは性能の順位ではない

規格自身が「記述的であって規範的ではない」と述べている

J3016 の本文には、次の記述がある。

"SAE's levels of driving automation are descriptive and informative, rather than normative, and technical rather than legal."

"Elements indicate minimum rather than maximum capabilities for each level."

SAE International, J3016_202104。原文のまま引用。正本との照合は行っていない。

ひとつめは「規範的ではなく記述的」だと述べている。ふたつめは、表に書かれた要素が各レベルの最小限の能力であって最大ではないと述べている。

さらに J3016 は、機能のレベルを製造者が決めるとも定めている。第三者が実測して割り当てるものではない。だから「レベル4を取得した」という表現は、正確には「製造者がレベル4と位置づけた機能について、当局の認可や許可を得た」という意味になる。

なお、規格に「レベルは優劣ではない」と文字どおり書かれた一文は確認できなかった。上の2つの引用からの解釈であることを断っておく。

実務上の帰結はこうなる。レベル2の高速道路走行と、レベル4の時速12kmの構内シャトルを、数字の大小で比べることはできない。両者は別の問題を解いている。

日本の制度では2つの手続がある

日本で無人の自動運転サービスを行うには、性質の違う2つの手続が必要になる。

表:日本の2つの手続。装置の認可と、運行の許可は別である。
手続根拠法対象誰が出すか
自動運行装置の認可道路運送車両法車に載っている装置
特定自動運行の許可道路交通法(令和4年法律第32号による改正)その車をその場所で走らせること都道府県公安委員会

国内で最初の例を挙げる。2023年3月30日にレベル4の自動運行装置として認可された。その後、2023年5月11日に福井県公安委員会が国内初の特定自動運行の許可を出している。装置が認可されただけでは走れない

国際的な枠組みも動いている

2026年6月、国連の会議体である WP.29 の第199回会合で、自動運転システムに関する枠組みが採択された。採択されたのは1本ではなく2本である。1958年協定に基づく協定規則第185号と、1998年協定に基づくグローバル技術規則である。

この2つは効き方が違う。1958年協定に基づく規則は締約国に拘束力があり、型式認証の相互承認を伴う。1998年協定に基づく規則は相互承認を持たず、各締約国が国内法制化を個別に判断する。したがって「国際基準ができたので日本でもすぐ使える」とは言えない

発効時期については、2026年7月30日時点で協定規則第185号の寄託者通告を確認できていない。詳しくは世界の基準と、日本で確認できることで扱う。

発注・検討するときの確認点

  1. 「レベル4と説明されているのは、どのODDの中でのレベル4ですか」

    なぜこれを聞くのか
    レベルは走れる範囲とセットでしか意味を持たない。範囲を伴わないレベルの主張は、内容が定まっていない。
  2. 「道路運送車両法の認可と、道路交通法の特定自動運行の許可を、それぞれ取得していますか」

    なぜこれを聞くのか
    2つは別の手続である。片方だけでは運行できない。
  3. 「そのレベルは誰が判定したものですか」

    なぜこれを聞くのか
    J3016はレベルを製造者が割り当てるものと定めている。第三者の実測ではない。

混同されやすい用語

表:似ているが指すものが違う用語。
この語別のこの語違い
レベル4無人レベル4は範囲内で機械が最後まで責任を持つこと。車内が無人かどうか、遠隔監視があるかどうかは別の話である。
認可許可認可は装置に対して国が、許可は運行に対して都道府県公安委員会が出す。
協定規則グローバル技術規則前者は相互承認を伴い締約国に拘束力がある。後者は各国の国内法制化を待つ。

出典

一次情報を優先している。「区分」は、その資料が発行機関自身の公表物(一次)か、第三者による索引・複製(ミラー)か、解説(二次)かを示す。リンク切れに備え、発行者・文書名・日付を本文でも残している。

  1. SAE InternationalJ3016_202104 Taxonomy and Definitions for Terms Related to Driving Automation Systems for On-Road Motor Vehicles(推奨実施要領。レベルは記述的・情報提供的であり規範的ではないと記載。各要素は最大能力ではなく最小能力を示す)2021年4月30日(初版2014年1月)/区分:一次/参照日 2026年7月30日https://saemobilus.sae.org/standards/j3016_202104-taxonomy-definitions-terms-related-driving-automation-systems-road-motor-vehicles
  2. 警察庁特定自動運行の許可制度(改正道路交通法・令和4年法律第32号。許可権者は都道府県公安委員会)施行 2023年4月1日/区分:一次/参照日 2026年7月30日https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/selfdriving/index.html
  3. 経済産業省レベル4自動運転移動サービスの実現(道路運送車両法に基づく国内初のレベル4自動運行装置の認可=2023年3月30日、国内初の特定自動運行許可=2023年5月11日 福井県公安委員会)2023年5月12日/区分:一次/参照日 2026年7月30日https://www.meti.go.jp/press/2023/05/20230512002/20230512002.html
  4. United Nations NewsNew global rules clear the road for driverless vehicles(WP.29 第199回会合での採択。支持した主要市場と主な要求を記載)2026年6月24日/区分:一次/参照日 2026年7月30日https://news.un.org/en/story/2026/06/1167797
  5. GlobalAutoRegs(UNECE文書の索引サービス)ECE/TRANS/WP.29/2026/137「Automated Driving Systems: Proposal for a new UN Regulation」(協定規則第185号の提案文書。対象 M1–M3・N1–N3・L6・L7)文書日付 2026年4月14日/区分:ミラー/参照日 2026年7月30日https://globalautoregs.com/documents/42313
  6. 国際標準化機構(ISO)ISO 34503:2023 Road vehicles — Test scenarios for automated driving systems — Specification for operational design domain(ODDのタクソノミと記述フォーマット。景観要素・環境条件・動的要素の3分類)2023年8月/区分:一次/参照日 2026年7月30日https://www.iso.org/standard/78952.html

最終更新日:2026年7月30日。このページの記述は同日時点で確認したものである。

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